Thursday, June 25, 2009

ビル・トッテン

金融機関にのっとられた国

大統領選挙期間中、オバマ氏が集めた選挙資金の総額は約693億円で、これは前例のない最高の集金力であった。もちろんゴールドマンサックスやシティグループといったウォール街の金融機関からの献金が上位を占めたことは言うまでもない。 オバマ政権が金融機関救済に新たに7,500億ドル(約73兆円)を投じるのはその御礼ではないか。それは日本の国家予算にも等 しい金額だ。

オバマ政権が議会に提出した(2009年10月1日から始まる)2010年度の予算は3兆9,400億ドルで、歳入が2兆3,800億 ドルと見込まれていることを計算すると、1兆7,500億ドルの大赤字である。イラクやアフガニスタンの戦費である防衛予算は5,340億ドルで、さらに 補正予算として1,300億ドルが追加されている。

オバマ大統領がウォール街に提供する7,500億ドルだが、昨年11月にはブッシュが7,000億ドルを支援していることを忘れてはな らない。つまり合計で1.45兆ドルがウォール街救済に使われる。さらに、もう一つの大きな支出は日本政府と同じく、アメリカ政府は巨額の借金を抱えてい る。その借金の利払いが1,640億ドルにものぼる。

戦費、ウォール街救済費用、借金の利子だけで、アメリカの税収2兆3,800億ドルの大部分が消える。これは国民皆保険の実現をめざす 医療保険改革や教育などの社会保障プログラムへの予算が大幅に減少することでもある。アメリカの個人の所得税税収は約1兆ドルで、ウォール街にはその 1.5倍の1.45兆ドルを支援するのがブッシュ・オバマ政権の真実の姿ではないだろうか。

オバマ大統領は演説で、国民皆保険、教育、再生可能なエネルギー、国家インフラへの投資を熱く語った。実現されれば、多くの国民が利益 を得ることになる。しかし現実は、公共サービスは民営化され、実体経済の停滞から、法人税、所得税が減収して財政危機はさらに悪化する。そして国有財産の 売却も進むだろう。

オバマ大統領にワシントンに呼ばれた麻生総理は、おそらく米国債を買い続けるよう命じられたのだろうし、日本や中国を訪問したクリントンも同じようなことを日中政府に伝えたに違いない。

では、アメリカの富はどこにいったのか。それはもちろんウォール街、救済を受けた金融エリートの手にわたった。1.45兆ドルを手にした ウォール街は、アメリカの国有財産を安く買い、または株価の下がった企業を買収し、民営化された事業を安く買う。日本のかんぽの宿と同じような仕組みであ る。

政府が救済したことで、アメリカの銀行が国有化されると報じるメディアがある。とんでもない。事実はその反対だ。政府が金融機関にのっとられた国。それがアメリカなのだ。

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